沖縄修学旅行おぅらいデジタル・アーカイブ
沖縄の世界遺産

首里城の復元と沖縄の文化
高良倉吉氏

3.首里城復元プロジェクト

首里城の復元と沖縄の文化
高良倉吉氏

3.首里城復元プロジェクト
(6)アジアの城と日本の城

首里城という建物は、1992年に一応60パーセント弱ができて一般公開されまして、いまでも着々と復元作業が進んでいますけれども、年間に240万、250万人ぐらいのお客さんが入る非常に人気のあるスポットになっていまして、他府県から修学旅行生もたくさん来ます。それで、お客さんにアンケートを書いてもらっています。首里城のどういう点を改善してほしいとか、ここはおかしいよとか。
私はときどき、そのアンケートを読むのですけれども、一番面白かったのは、たぶん女子高生のような人が書いたアンケートで、私は笑ってしまったのですけれども、「首里城を見たけど、建物が中華料理店の化け物みたいだった」と。赤い色で塗られていますから。普通、古色蒼然たる本土のお寺とか城を見ている人間からすると、あの派手派手な色は何なんだと思った。たぶん、中国っぽい感じもしたでしょう。
でも、これは正直な感想だと思います。私たちはあまり見たことがないよと。だから中華料理店の化け物という話になったのだと思いますが、それは当たっているのです。その高校生が言った感想というものは、日本のお城というカテゴリーの中で見るとそう感じる。それは当たり前です。こんなタイプの城は他府県にないからです。
ところが、首里城を日本の国内の枠組みで比較するのではなく、アジアというものに置いてみると、実は首里城のほうが一般的なのです。例えば、韓国のソウルに行きますと、ソウルには朝鮮王国時代の宮殿がたくさん残っています。首里城の親せきのような大きさであるし、形をしています。景福宮などもそうですね。
それから、中国に行きますと、遼寧省の瀋陽という町に、中国の最後の王朝だった清の初代・二代の皇帝が君臨した宮殿、瀋陽故宮がいまでも残っています。私もそこに調査に行きましたけれども、首里城と非常に近い。北京の紫禁城は規模は違いますけれども、実はあの紫禁城をお手本にして首里城はつくられましたから。
もう一つ例を挙げますと、ベトナムの中部あたりにフエという古い都があります。ベトナム最後の王朝だったグエン王朝の都だったところですが、そこにも宮殿が残っていまして、ベトナム戦争とかインドシナ戦争でだいぶんダメージを受けて、いま日本を中心にして復元修理工事が進んでいますけれども、あのフエの故宮を見たときにも首里城の親せきだと思いました。
実はアジアでは、首里城のほうが一般的な形なのです。アジアに置くと首里城が普通で、日本の中に置くと首里城が変になる。なぜあんなに派手派手なのという話になってしまうわけです。まさにそれは、琉球の歴史や文化というものを大変象徴していることだろうと思います。
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【参考資料】

「沖縄の世界遺産」

※資料随時追加予定