2.アメリカ兵につかまる
そしたらね(私たちが見張りをしていると)、やっぱりね、(アメリカ兵が)3名とことこ来るんですね。米軍はそのころはね、たくさんの兵隊で来るんじゃなくて、だいたい山探しですから、3名ぐらいで自動小銃を持って上がってきよったんですが、それで、これは大変だということで、するすると下りて、その避難小屋に行って知らせたんですよ。
そうしたら、みんなばっと、蜘蛛の子を散らすように逃げたんですね。そのときに、あるおばあちゃんがね、僕とお兄ちゃんの手をぐすっと捕まえてね、「待ちなさい。君たちは子どもだから殺さん。あの火、見ておきなさい」と。ちょうどお昼を炊いとったんですね。あの火を見とってくれと言われたんですよ。
ところがね、このおばあさん、あとで考えたら私のおばあちゃんなんですよ。このおばあちゃんがいつも言ってること、「私たちは年とってるから、もういつ死んでもいいよ。最初に逃がすのは子どもだよ」と、いつも言ってたんです。口ぐせのように。ところが、このおばあちゃんが二人を捕まえてね、「君たちは殺さんから、あの火を見ておきなさい」。それで自分は、とっとと逃げていったんですよ。
みんないなくなったところに、アメリカさん3名入ってきたんですね。そしたら、二人、火の番をして、ご飯を炊いている。そうしたら、(アメリカ兵が)優しいんですよ。優しくていいんだが、今日に限って違っているんですよ。「おいで」と言うわけ。そして、その避難小屋から出ていくわけです。出されて、ずっと遠くの村のほうに連れていかれたんですね。それは、(私たちを)収容所の方に連れていくということなんです。
兄貴は、困ったということで、デージナトン(大変なことになった)、逃げようということで、ジェスチャーで、「ご飯炊いとったから、食事を取ってくるから」なんて言ってね、「二人で行かせて」と言って、アメリカさんに言っているんですよ。ところがアメリカさんも、「いや、この子は置いていけ」と僕を置いて、「君、取ってこい」ということで、行かされて、結局、彼も逃げるわけにいかんから、ご飯とちょっとした着替えを持ってきてありましたね。