戦中・戦後の子どものオーラルヒストリー
仲本實先生のオーラルヒストリー

参照リスト   (家族)

食事 食事

1.変わっていった生活     3.母との再会

2.死が近づく

 ある日、その山の頂上にいましたらね、下のほうでパシン、パシンというような、木の葉でね、何かを撃つような音がするんですね。見たらね、何か人がいるらしくて、アメリカさんが木の葉で何か、ぶん殴っているような感じ。

 で、バシン、バシンとしたんですが、それからしばらくして鉄砲の音がしたんですよ。ああ、殺されたということでやったら、それから、すぐですね、このアメリカさんが帰ったら、そこからね、上がってきたんです。僕らのところに。女の子二人。それで、上の子は僕と同じ年でした。そして下の子は1年生とか言ってました。それからおじいちゃん。3名上がってきたんです。

 どうしたのと言ったら、お父さんが殺されたと。さっきの、要するにわれわれが見たことがそれだったわけですね。で、結局、着物を着けているけども、こう上を取らされて、結局おじいちゃんと上の姉さんは後ろを向きなさいと後ろを向かせて、ちっちゃい子はそのまま見せとって、お父さんを撃ってるんですね。そんなむごたらしいことをしたんですが、こんなことがありましたし。

 それから、親せきのね、兄弟、防衛隊から帰ってきて、その兄弟がおったんですが、その兄弟が家族と一緒にいるところを見つかった。これは僕らの穴じゃなくして別の穴なんですが。そこでいると、そこから二人だけ抜け出して、引っぱり出されて殺されたり。

 だから、これは危ないわということになるわけです。これは大変だわ。今度見つかったら、みんな殺されるぞということになってですね、おい、もうそろそろ収容所に行こうじゃないか、自分たちでということになります。

 ところが、ここには(壕の中には)若い連中もたくさんいるわけですね。若い連中もたくさんいるし、自分たちで収容所にそのまま行ったら、これも途中で危ないんです。石川まで4キロぐらいありますから。58号線を通っていくんですが。

 それで考えたことに、僕の1期兄貴の友だちがいたんですが、一つだけ年上の友だちがいたんですが、この子はうんと小さくて、僕の肩ぐらい。それから非常に腰の曲がったおじいちゃん。この二人に、あんたがた二人で石川まで行きなさいと言ったら、もう勇気を出してこの二人ね、むしろを担いでね、58号線をとことことことこ、真っ昼間に、仲泊を越えて、あの山道を越えて石川に行ったんです。