魔の森の黒鬼と銀のシギ★王様登場★
ターチャ そりゃほんとですか。
クッキー
ほんとほんと。お前さんは昨日やとわれたばかりだからよく教えておくけどねえ、
王様がお目覚めでベッドをお降りになる時、どっちの足を出すかでその日の御機
嫌が決まるんだよ。
〜王のテーマの歌〜
ターチャ
困った王様ですねえ。
大 臣
困った困った。毎日どうなるものやら、政治の見通しもたたんのだから。
だから、こうして、ベッドからどちらの足が出るか、右足か左足か、のぞきに来る。
クッキー
さあさあ、大臣、そんなこと話してないで、そろそろ。
皆
お目覚めの時間ですよ、お目覚めの。
大 臣
アーメン、どうぞ右足でありますように。
(鍵穴からのぞきこむ)
メリー
どうです。
大 臣
うーん、ちょうどお目覚めだ。
クッキー
それでどちらです、右足か左足か。
大 臣
まだ、ふとんから出てない。
メリー
出てない。
大 臣
出た!
クッキー
出た!
大 臣
出た出た。
シーモ
右ですか、左ですか。
大 臣
右が出た、右が。
シーモ
右!
大 臣
あっ、ひっこんだ。
クッキー
しっかりして下さいよ、大臣。
大 臣
わしがしっかりして右が出るか。(と、またのぞく)
それみろ、いらんこというから、左だ、左!
今日は左だぞ。
クッキー
さあ、大変だ、左だそうだよ、左。また、味の小言で一日くれる。
メリー
さあ、覚悟しなくちゃ。
大 臣
出て来られる、出て出て。
みんな入口に整列する。 待っても大様は出て来ない。
ターチャ
それで今日一日どうなるんです。
シーモ
メチャメチャだよ。
メリー
&メグス メチャメチャ!
時計の音がボーンボーンと七時を打つ。
ターチャ
出て来られませんねえ。
メリー
ほんと。
クッキー
もう一度のぞいたら。
大 臣
おかしいねえ、何しておられるんだろう。
(のぞく)何も見えん。
シーモ
何も見えん?
見えんということはないでしょう。どれ。(とのぞく)
あれ見えん。
大 臣
見えんだろう?(と、またのぞく)
王様、戸を開けて出てくる。
大臣、鼻をうって倒れる。
王 様
何が見えない、ごそごそ人の部屋をのぞきこんで。
わしが鍵穴をふさいでおったんだ。
今日は左足から降りたぞ、左足から。
大 臣
は、はい、よーくわかっております、はい。
一 同
おはようございます。
王 様
早い?早いか。
大 臣
いえ、七時でございますから、いつもお目覚めのお時間でございます。
王 様
いつも?わしは昨日六時に起きた。六時より遅いではないか。どこが早い。
大 臣
は、はい。さようで。(みんなに目くばせする)
一 同
お遅うございました。
メリー
お召し換えでございますが・・・。
王 様
今日の天気は?
メリー
晴でございます。
王 様
五月の晴には何色がいい。
メリー
緑いっぱいでございますので、反対色の赤がよろしいかと。(と、赤い服を差し出す)
王 様
赤はきつい。黄色がいい、黄色が。
メリー
は、はい、只今すぐに。
王 様
そんなことがわからんのか、そんなことが。
メリー
けど、昨日は赤を。
王 様
口答えするな、口答えを。日によって違うのじゃ。
メリー
は、はい。(去る)
王 様
顔を洗う。タオル!
シーモ
はい、準備しております。
王 様
一枚じゃないか。洗顔用とひげそり用のタオルをそれぞれ二枚づつ準備せよ。
計六枚じゃ。
シーモ
六枚、六枚も。
王 様 それにシーツも変えておけ。
シーモ
昨日変えたばかりで。
王 様
昨日変えても、わしが変えよといったら変えるんじゃ。つべこべ言うな。
シーモ
は、はい。
大 臣
今日のこれからの御予定を申し上げます。七時十分からおトイレ、
二十分からお体操、 続いて三十分から御朝食、
九時からお会議、続きまして十時五分からポンド国の大使がお見えになり、
十時二十五分から・・・。
王 様
今日は休みじゃ、何もしない。
大 臣
何も?
王 様
何も!
大 臣
それは困ります。
王 様
何もせんといったらせんのだ。
大 臣
そんな!
王 様
そんなもへちまもあるか。(メグスに)お前は何じゃ。
メグス
はい、今朝四時に起きてしぼりました、しぼりたての牛乳で。
王 様
あとで飲む。クッキーは何だ。
クッキー
はい、あの、その、いつものように御朝食のスープのお味見を。
王 様
ウーン、良い匂いだ。
クッキー
はい、王様のお好きな○○のスープでございます。
王 様
(のむ)ペッペッ、まずい、まずい、まずい!
今日はスープの味だけじゃない、全部の味見をする。
クッキー
全部、とおっしゃいますと。
王 様
全部じゃ。日によって違う、日によって。(と、出て行く)
メリー
(入って来て)お召換の準備ができました。
あの、お召換の。(皆、王様、王様と呼びさがす)
大 臣
弱ったことじゃ、今日は左足の日じゃ。
シーモ
今日一日、口出す手出す。
メリー
顔は出される、かんしゃく玉は出ほうだい。
大 臣
ナン夫人にお願いする以外ない。
メリー
そう、ナン様に。しかし、乳母ってどうしてあんな力があるんだろう。
シーモ
そりゃ小さい時から育てられたから、母親のように思うのさ。
それにしても陛下とナン様の関係は別だけどね。
メリー
あっ、ナン様だ。