- 梅が香に 追ひもどさるる 寒さかな 芭蕉
- カナリヤの 餌に束ねたる はこべかな 子規
- 小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ
緑なす繁縷は萌えず 若草も藉くによしなし 藤村
- よく見れば ナズナ花さく 垣根かな 芭蕉
- さまざまの こと思い出す 桜かな 芭蕉
- 花の雲 鐘は上野か 浅草か 芭蕉
- 木蓮に 夢のやうなる 小雨哉 漱石
- 行き過ぎて 尚連翹の 花明り 汀女
- 百両の 石にもまけぬ つつ哉 一茶
- いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に 匂ひぬるかな 伊勢大輔
- 分け行けば 躑躅の花粉 袖にあり 虚子
- 紫の 班の仏めく しゃがの花 虚子
- 老いて尚 なつかしき名の 母子草 虚子
- 我国は 草もさくらを 咲きにけり 一茶
- 裾山や 虹吐くあとの 夕つつじ 芭蕉
- たらの芽の とげだらけでも 喰ひけり 一茶
俳句・短歌 目次〈四季別〉 〈五十音順〉
春
夏
- 杜若 にたりやにたり 水の影 芭蕉
- 足首の ほこりたたいて 花しょうぶ 一茶
- あやめ草 足に結ばん 草鞋の緒 芭蕉
- ほととぎす 待てど来鳴かず 菖蒲草 玉に貫く日を いまだ遠みか 大伴家持
- 庭石を 抱いてさつきの 盛りかな 三宅蕭山
- 道ばたの 埃かむりて ほの白く 咲く野茨の 香こそ匂へれ 牧水
- み吉野は 春のけしきに かすめども むすぼほれたる 雪の下草 紫式部
- 逗留の 窓に落つるや 栗の花 去来
- 青梅に 手をかけて寝る 蛙かな 一茶
- 薄月夜 花くちなしの 匂いけり 子規
- 大きなる 紅ばらの花 ゆくりなく ぱっと眞紅に ひらきけるかも 白秋
- アジサイや 藪を小庭の 別座敷 芭蕉
- 紫陽花や はなだにかはる きのふけふ 子規
- 散れば咲き 散れば咲きして 百日紅 千代女
- 炎天の 地上花あり 百日紅 虚子
秋
- うつり行く 色をばしらず 言の葉の 名さへあだなる 露草の花 西行
- よい秋や 犬ころ草も ころころと 一茶
- 栗拾い ねんねんころり 云いながら 一茶
- 花むくげ はだか童の かざし哉 芭蕉
- 道のべの 木槿は馬に くはれけり 芭蕉
- それがしも 其の日暮らしぞ 花木槿 一茶
- 渋柿や 一口は食ふ 猿の面 芭蕉
- 白露を こぼさぬ萩の うねりかな 芭蕉
- 色付くや 豆腐に落ちて 薄紅葉 芭蕉
- 柿一つ 枝に残りて 烏哉 漱石
冬