終わりに

 以前は「交通不便な孤立した山村」(『角川日本地名大辞典』21岐阜県 1980年9月 角川書店)であった白川村も、国道の整備などに伴って、近年変容してきています。
  屋根葺き作業に関しても、今年度(2000年5月)の松古家葺き替え作業において、作業の様子を見学する観光客らが多数訪れていることなどから、多分にイベント的要素を含むようになっていることが分かり、葺き替え作業を取巻く状況の変化ぶりを窺い知ることができます。
  ただ、このように、様々な変容を見せる中にあっても、基本となる技法や「ユイ」の協力体制は変わらず受け継がれてきています。ツケガヤやフキガヤなどの屋根葺き作業過程では、飛騨の匠発祥の地飛騨地方に属する白川村らしく、考え尽くされた技術と工夫を見てとることができます。そうした意味でもこの作業は、まさに、飛騨の匠の心技を今に伝える伝統的作業と言えるのでしょう。
  しかし、一方で、めまぐるしく変化し続ける生活の中にあって、伝統を守り続けている地域の人々の多大なる努力と苦労の歴史があるということも私たちは忘れてはならないのです。