☆壬申の乱☆ 壬申の乱
作・こばやし ひろし
壬申の乱。
大化の改新の後、天皇の位についたのはサイメイであったが、大化の改新の首謀者のひとりである中大兄皇子に逆らえるものは誰一人としていなかった。実弟・オオアマ皇子でさえできなかった。彼は、中大兄皇子のいうままに己が最も愛していた額田王を彼に譲らなければならなかった。
その頃、都では、新しい宮殿作りに勤しんでいた。全国各地から集めた民衆たちに対する過酷な労働。民衆たちはそのあまりにも厳しいやり方に、毎夜逃げ出すものも少なくはなかった。そして、逃げ出したものは国へも帰れず流浪の盗賊となって、作りかけている宮殿に火を放つのであった。
その日、岡本宮殿から上がった炎もやはり放火であった。その場に駆けつけたオオアマ、オヨリ、アリマ。彼らの前には否応なく燃え盛る炎が広がる。その火の中にアリマ皇子は、父である先王・コウトク大王の姿をみる。彼は、しきりにアリマに訴える。"中大兄皇子にも中臣鎌足にも近づくな"と。その火を境に、アリマ皇子は狂ってしまった。そして、政治から離れるかのように湯治にでかけた。そんなアリマに豪族の不満がつのるのを恐れた中大兄皇子と中臣鎌足は、彼を謀反の罪でこの世から消し去った。そして、その話はオオアマ皇子にもとどくのであった。