☆岐阜わが街☆
ソーントン・ワイルダー 原作
こばやし ひろし 翻案・演出
岐阜わが街
ワイルダーの原作は、ニュー・ニューハンプシャー州の田舎町グローヴァーズ・コーナーズを背景に、その町の人々の生活を描いたものだが、それを岐阜に置き換え、岐阜に生き岐阜に死んだ人々に託して描きなおしたものがこの作品である。
第一幕は明治42年5月7日の岐阜の一日が舞台。この街で医者を生業とする田中家と、その隣人で濃飛日報の編集者小野家を中心に、日常生活を映し出している。
第二幕は8年後、明治から大正に時代も移っている。田中家の丈吉と小野家の恵美の結婚式前日。家業をついで医者になることができないでいる丈吉は、かといって好きな絵でも生活できず、気弱になっている。そして瞬く間に、14年の歳月が流れ、昭和に入って、岐阜の街もすっかり変わっている。アスファルトの道路、にぎやかな繁華街となった柳ヶ瀬、観光の目玉である鵜飼。丈吉と恵美夫婦には4人の子供が生まれ、そのうちの2人が死んだ。また、丈吉の父親もすでにこの世にいない。丈吉の描く絵は売れず、一家は貧乏、婿をもらって田中家を継いだ妹に借金までしている。
第三幕、恵美の葬式の日。お産で死んだ恵美が墓場に運ばれてくる。そこにはすでになくなった人々が恵美を迎え、死者の視点から、自分たちの生きた岐阜という街を見ることになる。(三宅 茜巳)